日本人の美意識を反映しやすいメディアだから。 中島信也

CMディレクター・中島信也さん。日清食品カップヌードル「Hungry?」、サントリー「伊右衛門」等、ヒットCMを25年作り続けてきた、いわずと知れた第一人者です。最近は銀座でW個展を開催、「あのCMの絵コンテ」を出版されたばかり。Webの世界でも95年の「コモエスタ赤坂40丁目」の昔から最近の「ShinyaTV」まで挑戦を続けておられます。その中島さんに、Webの映像について、そして1-click Awardについてお話しをうかがいました。

CM以上に、日本人が
世界に認められる可能性は大きい。

────中島信也さんは、CMのスペシャリストでいらっしゃるわけですが、
Webとの出会いはいつ頃だったのでしょうか。

僕がはじめて買ったパソコンは、アップルのPerforma630(1994年発売)。Webも当時から見ていました。NiftyServe使って、電話ケーブルにつなげて。とにかく遅くて、制約も多かった。今と比べたら天と地ほどの差がある環境やったね(笑)。でも、その頃のWebには、インタラクティブで面白い表現がいっぱい。魅力的でした。

────じゃあ、Webの変遷をつぶさに見て来られているわけですね。
いかがですか、今のWebは。

ウチの息子がね、中学生の時にホームページを立ち上げたわけですよ。CMやテレビ、あと映画、マンガなんていうメディアでは、そんな気軽に作るなんて考えられんことでしょう。その敷居の低さは、層が厚くなるという意味ではいい。けれども、「Webの映像だったらこんなもんでいい」という風潮を許してしまっているのも確か。映像作りのプロからすると、素人くさくて見てられんとこも・・・ある。

────なるほど。まだまだ面白くない、と。

でも本当は、日本人が高みを目指すのに、Webは絶好の土壌だと思うんです。Webって「箱庭的」なんですよ。テレビというのは、こうゴハンでも食べながら、割と遠くからぼーっと眺めるでしょう。そうすると、映像や音が、前に前に主張してないと見てもらえない。でも、Webは自分でマウスを使って、近い距離で、構えて見るじゃないですか。この小さい画面の中で、細かーいところにこだわっていくことで勝負できるわけ。だから、茶の湯以来の箱庭的感性、日本人の知恵、職人的なDNAが活かせる。僕は中村勇吾さんとお友達でよくお話しするんだけども、彼は良い例。もうすでに極めているからね。ああして、世界に認められる日本人が出やすい世界だと思いますよ。事実、カンヌ広告祭のサイバーライオンでは、早くから日本人の受賞は多いですしね。

ほとんど極められていないツールがある。
そんなチャンスは、なかなかない。

────CMディレクター歴25年の中島信也さんにそう言われると、
説得力があります。

CM撮影の機材を買うのは個人では難しいけど、Webのツールは手に入る。しかもまだ、表現の方向性がプロもアマもはっきりしていない。そんな時代の節目にめぐり合うチャンスはなかなかないんですよ。逃したらダメ。僕も実はそうでした。1987年頃から本格的なデジタル映像が出始めた。僕は、大掛かりなセットやら照明やら使った今までのCM技術では先輩達にかなわないですから、とにかくデジタル映像を使い倒した。試しながら、形にしていく中で、その技術が結実した「アリナミンV」のCMを、佐藤雅彦さんが注目してくれて…。今の人が前の世代に勝つつもりなら、やはりWeb技術で勝負するのがいいでしょうね。もっとおっさんをびびらしてちょうだい(笑)。

若いもんこそ、チームを組め。

────わかりました。では、応募する方々へ
ぜひアドバイスをお願いできればと思います。

僕は佐藤雅彦さんと仕事してから、自分は映像作りをする「技術者」と立ち位置を決めたんですよ。そうしたら、いろんなADやCMプランナーと組むことができるようになった。今だと信じられないかもしれないけど、当時はADとCMディレクターが組むことはほとんどなかったんですよ。異例だった。だけど、そうやっていろんな人と組んだのが、自分にとって非常に良かったと思いますね。得意技が違うから、生まれるものが必ずある。だから、こだわりを捨てて、誰かとチームを組んでみるって方法もあるよ、と言いたい。最近韓国のアニメが、急に面白くなっていて驚いたんだけど、脚本とデザインとCGとか、色んな才能を集めてチームを組むようになったからみたいなんですよね。

いちびってるのが見たいね。

────では最後に、1-click Awardでどんな作品をご覧になりたいですか?

あの、大阪弁で言ったら、「いちびってる」のが見たい。訳すと、自然につっこみたくなるというか、見てる人が遊ばれてしまうようなもの。ヒッチコックは、いつも観ている人をどう驚かしてやるかばっかり考えていた人なんやけど、彼の映画なんかも、すごく「いちびってる」よね。立派である必要は全然ない。むしろ、変なこだわりがあるほうがいい。そこにこだわること自体が、もうオカシイやろ!とつっこみたくなるとか。そういう新しい快感が欲しい。あー、最近あのムゲンプチプチっておもちゃが出たでしょ。ああいうのもいいね。逆にひたすら文字だけで押してくる作品なんかもあっていい。何でもええよね。相手を意識して、ちゃんといちびってたら。

────―確かにそんな感触の作品は見てみたいです!。ありがとうございました!

中島信也
東北新社
(株)東北新社専務取締役/CMディレクター/多摩美術大学教授

‘59福岡生まれ大阪育ち。’82武蔵美卒。'83「ナショナル換気扇」で演出デビュー。その後東北新社がデジタル映像基地「オムニバスジャパン」を創設、これを機にいちはやくデジタル技術をCMに導入しエンタテインメント性の高いCMを数多く演出。デジタル映像新時代へ向け邁進する東北新社グループのクリエイティブの中心的存在。同社で専務取締役を務める傍ら多数のCMを演出。また、多摩美大ではグラフィックデザイン学科教授として教鞭を執る。主な作品に日清カップヌードル「hungry?」(’93カンヌ広告祭グランプリ)、「ナショナルのあかり」(’01米国IBA賞最高賞)、サントリー「燃焼系アミノ式」(’03ACCグランプリ)、HONDA「StepWGN」、サントリー「伊右衛門」(’05ADCグランプリ)などがある。