誰しもが目にしたことのある、「T ブー! S」「にゃんまげ」「LISMO!」等の人気キャラクターから、柔道やラグビーの男臭い世界まで、見る人の心を一瞬でつかむアートディレクター・佐野研二郎さん。最近は、Webコンテンツのアートディレクションにも深く関わっているそうです。その佐野さんに「1-click Award」に期待することなどを伺いました。
あしたのために、いまやろう。(笑)
出品者には学生の方も多いのですが、
広告界を目指す学生の若手ヒーローとして、まずはアドバイスをお願いします。
こういうものの存在に気づいていながら参加しない人はその時点でダメです。もったいない。僕も美大の時、いろんな公募展に出しましたが(※ちなみに、佐野さんは学生時代、「ひとつぼ展」に2回入選されています。)自分が出品すると、他の人の作品をすごく真剣に見るようになるんですよ。「何でこんなのが大賞なんだ!」とか思いながら、ね。で、そのうち、はじめて他の作品の良いところと自分にないところに気づく。それが糧になる。だから、「Playerになれ!」って言いたい。観客はつまんないですね。落選しようが、誰もキミの名前なんか見てないって! ダメだったら、「出してない」って言えばいい(笑)。失うものなんか何もないんだから。どんどん自己アピールして欲しい。日本人的美学の「控えめ」なんて意味ない。よく「もう少し後になったら、やります」って言うのもそれは嘘だな(笑)。思い立ったが吉日。僕、「あしたのために、いまやろう」っていうトヨタ・エコプロジェクトのコピーが大好きなんですけど、まさにその通りだな、と思ってて。入賞したらもちろん嬉しいけど、本当はそれが全てではない。
その先のために、やるんです。
困難の山は、いつもある
それをバネにする方法を考えること。
ありがとうございます。
佐野さんにそう言われたら、もうやるしかないでしょう(笑)。
今、思い出してたんですけど、学生の時って、思わぬ障害がいろいろあるんですよね。絵を描こうと思ったら、赤い絵の具がない! 買う金も時間もない! 彼女とケンカした!みたいなこととか、しょっちゅうあるはず(笑)。結局クリエイティブはそことの勝負かも。でも、そういう「困難の山」って、プロになったって常に必ず何かあるんです。しかも、プロジェクトが大きくなるにつれて、当然山も大きくなる。今の僕の「山」は相当大きいですよ。学生の方はわからないかもしれないけど、広告作りは、制約だらけだからね。でも、プロセスの苦労を感じさせないのが僕の美学。だって、そのほうが見てる方も作ってるほうも単純に気持ちいいから。
でも、その「山」は乗り越えなければならないわけですよね。
そこを乗り越えるために必要なのが、「アイデアの核」です。制約をバネにする方法、逆にパワーに転換する方法は、絶対にどこかにある。そう信じて、考え抜くことです。だから、なまじ今センスがいい人より精神的にタフでポジティブな人の方が吸収力があるから絶対伸びる。
いきなり、感性で作る。
では、実際に佐野さんが実践されている「方法」を、
少し紹介していただけないでしょうか?
まず、「理性をなくす」ようにしているんです(笑)。はじめに、デザインヤンキーみたいな気分で(笑)衝動的にバーっとものすごいスピードで作ってしまう。その後に理性を取り戻して、「これはさすがにヤバイ」(笑)というものを修正していく。理性を全面に出したものは、いくらでも作れてしまうんだけど、それって普通でつまんないんだよね。僕のおじいさんは先生だったんだけど、「抜群に頭のいい子か、とことん出来の悪い子しか、覚えてない」って言ってた。コミュニケーションも、それと一緒だと思うんですよ。いい意味で極端じゃないと印象に残らないものだと思います。印象に残らないものは機能しないので環境にも良くないし(笑)
明解なアイデアと
明瞭な仕上げ。
つまり、パッと目立つことが何より大切ということですね。
そうです。「すごいカッコイイ!」でも「うわ、カワイイ~★」でも「バッカバカしい~」でもなんでもいいんだけど、コミュニケーションのドアがとにかく明解で強いことが大切。あと、何か呼びやすい名前をつけられるのは、良いシンボル、アイコンがある作品ってことですね。例えば、昨年のグランプリは「あの、おっぱいのヤツ」って自然に言っちゃうじゃないですか(笑)。その時点でかなり優位に立ってるよね。つまり、そこを設計の柱にする、それができているか検証するというのは自分のプランを客観的にみるフィルターとしてとても大切です。
他に、何か大切にしていることはありますか?
結局はきちんとした仕上げだな、と常々思ってます。キャラクターや広告の人格って、微妙な色やレイアウトの違いで、がらっと変わることがよくある。特に、バカバカしいものを作るときは、細かいところに手を抜くと、ただの悪ふざけになっちゃう。それは絶対に避けないといけない。最近は、クライアントにも頼られる範囲が広くなっていて、クリエイターの責任もその分大きくなってますから。だからといって、シリアスになりすぎず、できるだけ大胆に、そして理性で検証。そのくり返しで磨いていく。
ありがとうございます。では、最後にもう1つアドバイスをお願いします。
仲條さんの言葉で、「締め切りが仕上がり」というのがあります(笑)。僕も深く共感します。締め切りを決めないと、人間、動かないんだよね。だから、皆さんも「1-click Award」の締め切りをいい機会に、技術を磨いたり、就職用の作品をつくっちゃってください!(あくまでも自分のために)それで入賞すればお金がもらえるんだから宝くじより、全然夢があるよね(笑)
佐野研二郎
博報堂/HAKUHODO DESIGN
クリエイティブディレクター/アートディレクター
1972年東京生まれ。1996年多摩美術大学卒業、博報堂入社。主な仕事に、 LISMO!、東京ミッドタウン 、宇多田ヒカル、YUI、TブーS!、ニャンまげ、金のつぶ「とろっ豆」、ケネディー・センター、キリン円熟、日産MURANO、森美術館、表参道ヒルズ、ベネッセ、フランフランPIGMUG、レミオロメン、つじあやの、ラフォーレ原宿、ソニーコンピュータ・PSP、としまえん、世界柔道2003公式ロゴマーク、ラグビー日本代表、ワールドカップバレー、パルコなど、商品開発やシンボルマーク、キャラクターデザインをはじめとして国内外で広告デザイン、TVCM、 店頭POPまで一貫した明解なアートディレクションを展開している。