「BIG SHADOW」「AKIBAMAN」、最新作ではソニー「REC YOU」、など斬新なWeb表現を連発して注目を受けているクリエイター、伊藤直樹さん(GT)。世界的にも知られる存在で、最近はイギリスやブラジルからも、Webクリエイティブのシンポジウム等に声がかかっているそうです。今のWeb広告のど真ん中にいる伊藤さんに、Webをどう見ているのか、1-click Awardに期待することなどを伺いました。
毎日、「新しいもの選手権」。
Webに関わってから今まで、伊藤さんの環境も
随分変わられたように思いますが、いかがでしたか?
ちょうど、「Webの高度成長期」に巡り合えたことは幸せだと思っています。今もまだ、高度成長期は続いてますよ。変化がものすごく激しい。新しいものが次々に現れる。毎日、まさに「新しいもの選手権」です。「コピペがバレやすい」というWebの特徴が、それに拍車をかけてますね。ファッション性が問われる世界です。私は、いつも変わり続けていくのが好きですから、Webは体質的にとても合っています。
新しいというのは、技術的にですか?
それとも、アイデアが新しいものが面白いのでしょうか?
アイデアの切れのよさも、表現のディテールも、どちらも大切ですよ。技術が優れていればいい、ということでもないし、アイデアが良ければいい、ということでもない。技術をベースにした秀逸なアイデアが、画期的な表現を生むんです。技術の中に、いくらでもアイデアの種は見つかるはずです。
古い技術と新しい技術を、
どう組み合わせるかが勝負。
「技術の中のアイデア」。もう少し詳しくお話しを伺いたいです。
技術というのは、何もIT技術のことだけを指すのではありません。新しいものを創るには、「古い技術」に注目したほうがいいですね。例えば、日常にある「ドアのノブ」。ドアノブは、ひねれば開く。その技術に注目してみる。クリックをドアと捉えるなら、ドアノブは何なのか。ドアノブはどういう風にできていて、それをどうWebに持ち込むと面白いのか。そういうことを追求するのが、面白い。古い技術と新しい技術を、どう組み合わせるかが勝負です。少なくとも私はそう考えて、モノづくりをしています。
Webを、メディアと考えない。
ツールや装置に見立てること。
Webというのは、そういう技術を持ち込める場所なんですね。
そうですね。あの、これは大切なことなんですが、Webは「メディアじゃない」と定義したほうがいいです。メディアではなく、ツールや装置だと思ったほうがいい。Webはメディアフィーがかからないわけだし、Webに乗せただけでは、多くの人に情報を伝えることはできないでしょう。「メディア」といわれるものとは、かなり性質が違うんです。ツールか装置だと考えて、入り口と出口を自由に発想すると、面白いものが表現できます。
言われてみれば、「BIG SHADOW」は、まさにWebを装置として使っていました!
あれは、Webを街にメジャーデビューさせたかったんです。オタク文化とか、広告的な文脈で語られることが多いじゃないですか、Webって。でも、本当はそうじゃない。誰でも楽しく使える装置で、「ecotonoha」のような極みに達した表現も存在する、多様な場所なんだということを、皆に知って欲しかった。ブログで止まるなよ、と。相当前から、ああいうことをいつかやってやろうと狙ってました。
面白いものは、だいたい
インタラクティブにできている。
では、1-click Awardに出品しようとしている
皆さんに、アドバイスをお願いできますか。
インタラクティブを追求した表現が、良い表現です。これは、断言できます。Webだけじゃないんですよ。カンヌで賞を獲るようなポスターもCMも、人気のあるイベントや芝居なんかも、全部「インタラクティブ」にできているんです。インタラクティブというのは、一言で言えば、「行動をデザインすること」。人の行動心理を読んで、上手に誘導するしくみを作ることです。だから、逆に言えば、インタラクティブな表現なら、何を使ってもいいと思います。それが面白いのなら、インスタレーションをビデオに収めて流すのもアリ。得意分野で勝負しましょうよ。
通常の広告とは、別だと思ったほうがいいということですね。
でも、たった1つのビジュアルやキャッチコピーだけで、ものすごい斬新な表現が創れるかもしれない。そういった意味では、通常の広告と変わりません。だから、「Webのコトバ」というのはもっと追求されるべきでしょうね。例えば、googleのようなロボット検索が主流になってから、「伊藤 Web」みたいに単語を並べる言語感覚が普通になったじゃないですか。それを突き詰めてみても、たとえば面白いかもしれない。あと、意外な人をチームに加えてみたら、発想がジャンプすることが多いですよ。私がよく使う手です。とにかく、自由に、やわらかくいろいろ考えてみて下さい。
伊藤直樹
GT INC.
クリエイティブディレクター
1971年生まれ。早稲田大学卒業後、ADKを経て、2006年7月よりクリエイティブブティックGT所属。CMからWEBまでをフラットにこなす。最近の仕事に、ナイキ「Nike Cosplay」、マイクロソフト「BIG SHADOW」など。2007年東京インタラクティブアドアワードグランプリ、ベストクリエイター賞。2007年カンヌ国際広告祭では、「BIG SHADOW」がアウトドア、サイバー両部門で金賞、「Nike Cosplay」がサイバー、ダイレクト両部門で銅賞を受賞。その他、アドフェストグランプリ、ONE SHOW金賞、FUTURE MARKETING AWARD THE VIRAL AWARD 、NYFESTIVAL金賞・銅賞、NY ADC銀賞など。2007年NY ADC、ONE SHOW INTERACTIVE審査員。著書に、「WEBキャンペーンのしかけ方」。